うつ治療に学ぶ医学的ストレス解消 ~メンタルハック

旧帝大理系→人気企業入社→活躍!→うつ発症、休職→うつを軽視し即復職→うつ再発・再休職orz(イマココ)  意識高い系の元モーレツ理科系クリエイターが、挫折を経て最新のストレス研究を徹底調査&即実践!メンタル強化への役立つ情報と、自身の体験談を更新中 @eli_masa_ /メタ認知/マインドフルネス/ワーキングメモリー

自身の病気を学ぶこと〜小林麻央さん、DeNA南場社長、スティーブ・ジョブズの話

はじめに

人の生死に関係することについて、なんらかの考えを発する際には、
細心の注意を払わなければならない。
場合によっては、自分の考えは胸にしまっておいた方が良いこともある。
 
また、今回の麻央さんに関する報道姿勢やその真偽についても、議論の余地はあると思う。その報道内容を元に自分の意見を言うのであるから、私も同罪になるかもしれない。

しかし、今回、この記事を書こうと思ったのは、皆さんにどうしても考えて欲しいことがあるからだ。

麻央さんに関して

 海老蔵さんが、麻央さんの病状について発表した最初の会見の際、
ガンに関して、平均レベルの知識しか持っていない一人として私はこう感じた、

「乳がんで病状が良くないということは、発見が遅かったのかな」

私の中では、乳がんは早期に発見されれば、完治する率が低くない病気だという知識(と呼べるほどの立派なものではないが)があったからだ。

しかし、その後の報道は、誤診があったとするもの、そして麻央さんが標準治療を拒んだとするものであった。

本当のところは私には分からない。特に誤診であったかについては、医師の中でも意見が割れているようだ。

ただ、時系列で考えたときに、「麻央さんが標準治療を拒んだ」とすると、つじつまが合うことが多いことなどを踏まえ、私は、この点は事実だったのではと思っている。

そして結果として、麻央さんは34歳の若さで先日亡くなった。

ここからは、情報ソースとして信頼度の低いもの、そして私の推測も交えながらだが、
冒頭の通り、どうしても皆さんに考えて欲しいことがあるので、誤解を恐れず、論理を進めさせて欲しい。

麻央さんについては、たくさんの記事が出ているが、まだご存知ない方のために、いくつか載せておく。
(偏りのないように選んだつもりだが、気になる方はご自身で検索なさるといいと思います)

http://mess-y.com/archives/49131

https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12136-400066/

http://asajo.jp/excerpt/32510

麻央さんは、(海老蔵さんにも相談したのだろう)
その段階で5年生存率は90%超あったという標準治療を断り、
民間療法(一説には気功治療)を行うという選択肢を選んだ。

いろいろな事情があるにせよ、「なぜその選択を…」と私は思ってしまう。

後にブログで

「 あのとき、もっと自分の身体を大切にすればよかった
あのとき、もうひとつ病院に行けばよかった
あのとき、信じなければよかった」 

と書いている「あのとき」の病気への向き合い方がどうだったのか。

本当の事は分からない。個々人で想像することしか。

DeNA南場社長について 

私は、麻央さんの一連の報道を耳にしたときに、非常に対照的だなと、最初に頭に浮かんだ方がいる。
DeNAで先日社長に復帰された、南場智子さんだ。

ご存知の方もいると思うが、彼女は旦那さんがガンになり、その治療のために、
2011年から数年の間、社長の座を退いて、ほぼ看病に専念するという選択をした。
その際の、病気への向き合い方が、彼女のブログから垣間見えるので、一部抜粋する。
(麻央さんは病気当事者で、南場さんは当事者ではないですが、それを踏まえても、対照的だと思います。)

https://ameblo.jp/nambadena/entry-11113732009.html

それから私は国内外の専門家に術後の治療法について相談してまわった。問題は病気や治療法の勉強が追いつかないことだった。
(中略)
退院するころには化学療法が始まるが、本当にそれだけでいいのか、このまま国内にいて良いのか、まともな意思決定をするためには早急に体系的な知識を身につけなければならない。
焦りと疲労が私を悲観的にし、ロンドンで起業したばかりのDeNA創業メンバーのナベに電話で文字通り泣きついた。
医者か医学部生でプロジェクトチームを作りたいが誰か知らないかと尋ねる私に、「ぼくがやります」と言って立ち上げたばかりの会社をロンドンにおいて東京に飛んで来てくれた。
(中略)
しかしマッキンゼーでも卓越していたナベのリサーチ力はやはりスゴかった。東京に着陸するころにはすでに数十冊の書籍と膨大な論文を読み込んで来たナベがもう一人の北大医学部phDの友人と組んで私のアタマに検討するべき治療法の基礎を叩き込んでくれた。
お陰で情報収集力が格段に向上し、落ち着いてまっとうな判断を行えるようになって来た。並行して病院の先生との信頼関係が築けて来た。検討の結果、まずは国内でいくつかの治療法を試してみようということになった。
(中略)
治療方針がある程度決まったあと私たちは免疫力と生活に関わる本を読みあさり、大学の先生のご指導も受け、生活改善に取り組んだ。
食事は数ある書籍の中で故シュレベール博士の本をバイブルと決めた。水や調味料も一新した。
空気の奇麗な葉山を拠点とし、あとは睡眠、運動、整体、瞑想などなど、それから大事なのが笑い。 

 

その後、旦那さんの経過は良好のように、著書などにも書かれていたが、残念ながら、昨年の12月に亡くなった。

(そのDeNAがwelq問題を起こしたということについては、それはまた様々な問題・議論を孕んでおり、
それだけで記事が一本かけてしまうので、ここでは割愛させて頂く。)

 

皆さんは、この南場さんの話を見てどのように、感じただろうか。
私は、治療に対してこんなに主体的になる事ができるという事に、大きな感動を覚えた。

「自分は有名会社の創業社長のように、頭が良いわけでも、人脈があるわけでもないから、南場社長の話はあまり参考にならない」

ごもっともである。しかし、自分の病気を受け入れ、自分のできる範囲の勉強、情報収集をし、一つでも多くの先生の意見を得ることは、誰しもができると私は思う。

「こんなにベストを尽くしてもガンは治らない病気なんだな」 

例え結果が同じでも、その過程によって、本人・周囲の感じ方は違うのではないか。自分なら少しでも後悔が残らないような行動をとりたいし、大切な人にはそのような行動をとって欲しいと私は思う。

 

なぜ私がこのようなことを書くか

それは、私自身の経験からである。

プロフィールにある通り、私はうつ病が初めて発症した際、病気に全く向き合わなかった。
ガンと、うつ病を一緒に議論するなという意見はもっともであるが、
きっとどんな病気にも共通する大切なことがある。

①まず病気を正面から受け入れること
 発症当初は、自身の病気を受け入れられなかった。
 それもあり、抗うつ薬をなるべく早く辞めたいと、主治医に強く訴え、
 通常よりも、かなり短い期間しか薬を服用しなかった。
 (そして再発の一つの要因となった)

②自分の病気について正しく学ぶこと
 ①の理由もあり、初めは勉強する必要があるとも思っていなかった。
 そのため再発予防の知識を全く持たずに復職をした。例えば、
 ・うつは再発の危険性が非常に高い(60%とも言われる)こと
 ・ストレス以外に、身体の疲れなども再発のきっかけになること。
 ・一度、抑うつ気分を感じ始めると、過去の思考の癖により、
  一気に症状が悪化すること。

 せめて、こういった基礎知識を学んでいれば、再発せずに済み、多くの人に迷惑をかけたり、会社での信頼を失墜させることもなかったかもしれない。
 また、根本的な治療には、いつも記事化している、マインドフルネス、メタ認知、対人関係療法などの心理療法が重要で有ることも、初めは全く知らず見向きもしなかった。

 はっきり言おう、
 私の1度目のうつ病への向き合い方は完全に間違っていた

 まず病気を受け入れるべきだった。
 そして、病気について勉強し、再発予防に細心の注意を払うとともに、
 医師と相談の上、効果ある治療法を適切に実施すべきだった。

 その結果、自業自得ともいえる、うつの再発を経験し、
   私は大きな後悔をする事になった

病気になったときのことを、今考えませんか?

病気になると、大きなものを失うリスクが発生する。
私は、「社会的な信頼の失墜」だけで済んだとも言えるかもしれない。
それと引き換えに、病気と真正面から向き合うことを学べた。
私は、幸運な事に、2回、同じ病気に向き合う機会が与えられたから。

しかし、一度目の対応の過ちで、取り返しのつかないことになることもある。
病気になり、大きなリスクを背負ったとき、どのように向き合い、どういう情報収集・意思決定をするのか。

厳しい書き方なのは承知で書くと、
・少ない、あるいは信頼性の乏しい情報の中から、気功療法を選択するのか。
それとも
・人脈、知識をフルに活かし、最先端の情報を集め科学的エビデンスある治療を選択するのか。(果たして、それができるだけのスキル、人脈、行動力が、現在の自分にどの程度あるのかも合わせて考えて欲しい)


この機会に考えてみると、将来、もしものときに、慌てなくて済むかもしれない。

 

スティーブ・ジョブズに関して

長くなり、恐縮だが、スティーブ・ジョブズ氏のエピソードにも触れたい。

膵臓ガンについてはあの伝説のスピーチでご存知の方も多いだろう。
奇跡的に手術ができるタイプのガンだったことが、フィーチャーされている。

しかし、それが分かった当初、彼は手術を受けるのを拒んだのをご存知だろうか。
伝記によると、

「体を開けられるのは嫌だった」というのが理由で食事療法などを試みた。
早く手術を受けていれば、その後の展開が変わっていた可能性もあり、「本人も後悔していた」

あのジョブズでさえも、「後悔していた」とあるように判断を誤ることがある。
享年56。もう20年ジョブズが活躍した場合の、世界の発展を見られなかったのは、
残念でならない。 


最後に、麻央さんのブログより

自身で病気を理解することの大切さについて、以下のことを書いています。

『余命数カ月と言われた状態から20年生きている方が、
  「自分にとって一番の医者は、自分、になること」  と仰っていた。』

  ※『自分が「自分にとって一番の医者」になること』 という意味だと思っています。

 

私は、自身の病気に対して、より深く学び、より主体的に治療に取り組んでいこうと改めて決意した。その試行錯誤の様子をみなさんに共有するというのも、この(弱小)ブログの意義なんだということは、常に念頭においておこうと思う。

 

最後になりますが、海老蔵さんの会見以降の麻央さんの治療への前向きで真剣な取り組みには、多くの人が心を動かされました。

麻央さんのご冥福をお祈りしております。

 

以上、お目通し頂きましてありがとうございました。